ちょっと一線を画してはいたけれどさ...。
Def Leppard「High 'n' Dry」
Def Leppardっていうと、王道スケール・ロックかつ分かりやすいハード・ロックを展開して
Bon Joviなんかと並べて書かれるヒットメーカーに見えなくもないがご存知のとおり元は
NWOBHMの出身(という書き方もなんか変か)で、出てきた当時は
Iron Maidenや
Saxon、
Samsonと並べられた存在だったはずだ。もちろん、今までにも書いてきたとおり正統派ブリティッシュ・ハードロックではなくって
AC/DCなんかと同じ列に並べられてしかるべきノリのあるロケンロールを展開していたわけなのだが。
それでも、
Phil Collen(フィル・コリン)が加入してアメリカを向いた出世作
「Pyromania」(Phil Collen自身は音楽的イニシアチブをこの時点で全くとってないが)を出すまでは洗練という部分はちょっと見当たらない良質B級ハードロックをやっていた。もちろん、そこまでは
Pete Willis(ピート・ウィリス)主導で演っていて若さはあってもヴィジュアル的にはパッとしないバンドであったが、青田買いの時期のマニア(特にゴリゴリなメタル・マニアではない)はそのスケールが大きくなりそうな楽曲とアレンジ&
Joe Elliott (ジョー・エリオット)の声には注目していたはずだ。かくいう僕もその一人で1枚目も憎からず思っていた(但し本命はあくまでも
Paul Di'Anno(ポール・ディアノ)を擁するIron Maidenでしかなかったが)ところに出たこの2枚目ではかなりの満足度を感じたし、こりゃあひょっとするとその時点で上位に居るNWOBHMの連中を食うどころかもひとつ飛び越えてしまうんじゃないの?と思わされもしたものだ。
もちろん、2人のギタリスト(
Steve Clark(スティーブ・クラーク:大好き!)とPete Willis)がLes Paul使いだったことも見た目理由の一つにはなったろうが、何と言ってもAC/DCばりのイカしたリフから始まる
”Let It Go”を先頭にした曲達の出来の良さが気に入った一番の理由である。特に3曲目の
”High 'N' Dry ”から
”Bringin' on the Heartbreak”、
”Switch 625”、
”You Got Me Runnin'”と続く4曲はアルバム曲順の中でも白眉としていいかもしれないと思えてしまう。それほど、曲もアレンジも非常に出来がいいのだ。ここには本当にPete Willis(イヤな奴だったらしいが)の才能に脱帽する。
結局、その後にこのアルバムで音作りに自信を得たメンバー達に謀反されてヴィジュアル的にも良くて
Girlで名も売れていたPhil Collenを入れて、本当はPete Willisの功績であるはずの「Pyromania」でスケールの大きい音を手中にして売れていってしまうのは皮肉なものだ。まあ、全ての音録りを終えてからソロの差し替えから入った後釜がPhil Collenだったというのは当時のNWOBHMマニアはいささか面食らったような気がしたものだ。あくまでも、Phil Collenは速弾きの多少出来るエセ・アイドルロッカー的に思われてもいたし(Phil Collenにとっても他メンバーにとっても幸せな結婚となったようだが)。
まあ、音自体は録音状態もあってスケールの大きさはスポイルされて多少荒削りな部分はあるにせよ今でもDef Leppardというと僕自身はすぐこのアルバムの曲達を思い浮かべてしまうくらい気に入って聴いていたアルバムなのである。