バイタリティ溢れる....カヴァーの量も並じゃあないです。
Elvis Costello 「KOJAK Variety」
このアルバムもカヴァー、カヴァー、カヴァー一辺倒のアルバムです。本当にコステロ先生は奥が深くて予想も出来なければ常人で追いつくことなんて出来ません。
あの名作(と勝手にアッシが決めている)カントリー・カヴァーの「
Almost Blue」では、自分の父親も見据えたルーツ・ミュージックで自分を見つめ直す作業をしたデクラン青年ですが、この「
KOJAK Variety」ではルーツというよりはその時点時点でのお気に入りやよく聞いてたものを自分なりに歌ったというものでしょう。そういう意味で「Almost Blue」のような切迫感というか必死感は薄く思いますね。
このアルバムに出てくる元アーティストは本当に様々で、デクラン氏(もうこのアルバム時点では青年ではないから)の幅広い嗜好とそのひねくれ方が良く分かります。このアルバムでは「
King Of America」以降でのコンフェデレイツとしての
ジェイムズ・バートン達が参加してますが、テレキャス名人バートンはこのアルバムではもう一人のギタリストの
マーク・リボーを支える役割に徹しているようです。
全曲解説は専門誌に任せるとして、元アーティストは、
ハウリン・ウルフ、シュープリームス、ボブ・ディラン、ランディ・ニューマン、リトル・リチャード、ジェイムズ・カー、ナット・キング・コール、アリサ・フランクリンそしてキンクス(!)といったところ。
この中で印象的なのは、まずはディランの
”I Threw It All Away”。もとがキレイな曲ですが、その曲に対して非常にザラついたコステロの声がのります。特にこのアルバムではスローナンバーについて今までよりもわざとかと思えるくらいのザラついた部分を強調するんですよね。時期的にアングリーだったような気はしませんが、精神的ザラつきがすぐに表面化される人ですから、もしかしたら実は何かあったのかもしれませんね。ギター的に面白いのはビートルズも演っていた
”Leave My Kitten Alone”。ちょっと違ったリボーのスイングソロが聞けます。とってもいい味出してますよ。
バラードのように一番心をうつのはニューマンの
”I've Been Wrong Before”で、本当にゆったりと静かに歌うコステロ先生の声にノックアウトです。本当にこのテを演ると歳を加えるごとに凄くなってゆきますよ、コステロ先生は。また、
”Must You Throw Dirt In My Face”でもバートン師匠のギターとともに深い声が響きます。
そして、やはりアルバムのハイライトはこんな風に演奏されちゃったんじゃ
レイ・デイヴィスも裸足で逃げ出すキンクスの
”Days”です。本当にその豊かな表現力を思い知らされます。恐るべきデクラン氏。
もちろん、オリジナルでも多作(最近はそうでもない)なコステロ先生ですが、ヴォーナストラック等を含めればそのカヴァープレイも相当なもの。中でも正式にアルバム化されたカヴァー集というのはオリジナルアルバムとひと味違ったアプローチで非常に純粋に楽しく聞けるアルバムでもあります。
既にこの頃また
The Attractionsとの軋みは来てたんですよね。
使うギターにはこだわらない先生ですが、やはりフェンダー系が似合うと思います。このアルバムから「
All This Useless Beauty」発売後の厚生年金会館では相当長いギターソロもキメてくれた先生でした。(かなりの部分でヘロヘロではありましたが)